短歌日記

「魂の闘い告げるサイレンの音を聞く度思い出す友」


小学校の時の同級生に「甲子園で選手宣誓をする」という夢を持っている友達がいた。卒業文集の夢を書く欄にプロ野球選手になると書いている子は沢山いたのだが、甲子園しかも選手宣誓と書いていたのは当然彼だけだった。ぼくは小学校を卒業してすぐに引越しをしたため彼との付き合いはその後なかったのだけど、ことあるごとに甲子園に行く甲子園に行くと言っていたので彼のことは印象に残っていた。
その友達の名前を5年ぶりに耳にしたのは夏の高校野球県大会の準決勝のテレビ中継でだった。テレビから流れてくる彼の名前。新聞に載っている彼の名前。彼は代打だった。それ以外はベンチに座っていた。それでもぐっときた。彼が夢に向かって頑張っている姿を想像せずにはいられなかった。彼のいた高校はそのまま県大会を勝ち抜き見事に甲子園への出場を決めた。ぼくは彼の甲子園出場が嬉しくてしかたがなかった。
甲子園で彼の高校は準決勝まで進出。しかし1回戦から準々決勝の4試合で彼の出番は1度もなかった。それでもたまに映るベンチで大声を張り上げて応援する彼の姿を何度か見ることが出来た。そして準決勝。彼の高校は9回最後の攻撃に入る時点で1-6で負けていた。9回も淡々と進み2アウト。その時ネクストバッターズサークルに彼の姿が。最後の最後に代打として彼の出番がやってきたのだ。2度3度と豪快に素振りをする。そしてバッターボックスへ。結果は、三球三振。3回のスイングとも豪快な空振り。これで彼の高校の甲子園準決勝敗退が決定した。
それでもこれからもぼくは高校野球を見るたびに思い出すだろう。甲子園に行くんだとはしゃいでいた小学生の時の彼の笑顔を。テレビから彼の名前が聞こえてきた時の感動を。三振に終わったとは言えあの気持ち良いまでに豪快だったスイングを。その後でバットを叩きつけて悔しがっていた姿を。それから1年後久しぶりに再開した時の照れ笑いを。

と言うわけでここでのサイレンと言うのは甲子園の試合開始の合図のサイレンです。春の甲子園、今日から始まりましたからね。